大橋貴洸六段がカラフルなスーツで目立ち始めたとき、神吉七段が「よき後継者を得た」と喜んだかどうかは分かりません(笑)。大橋さんにとっては、自身のモチベーションを上げる戦闘服としての要素が高そう。そしてそれは個性の発露の一例に過ぎないようです。
大橋さんの美意識は著書に強く表れています。デビュー作「耀龍ひねり飛車」の冒頭、自らの理想の将棋を「耀龍」(ようりゅう)と名づけてセルフブランディング。テキストや図面のフォントを(丸ゴシックのような書体で)統一するなど、多くのこだわりが散りばめられています。
2作目の「耀龍四間飛車」は、ラノベのようなサブタイトルが楽しい。(このアイデアについては、こちらの記事に詳しい)。本書を端緒としてプロ間でも多く採用され、升田幸三賞を受賞したことは、極めて珍しい事例でしょう。
受講者の方から見せてもらった指導対局の棋譜の中でも、大橋さんの棋譜は美しさが際立っていた。最終盤、下手にきれいな決め手があり、それは耀龍と例えるにふさわしいものでした。

(図は▲1三歩まで)

【ピリ辛流2手目△4二飛メモ(8)】図に至っては後手も暴れていくよりない。図から△4五桂▲4六角△8五桂▲同桂△同歩▲1四香△3七桂成▲同角△8四桂▲1二歩成△9五歩▲1一と△8六歩▲8五香△7三桂。△8四桂ではすぐに△9五歩でしたか。ミレニアムは遠かった…。
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