ブログ - 将棋レッスン ワン・トゥ・ワン

初段ナビゲーターのランダムノート

2022/11


将棋を覚えた小学生のとき(50年ほど前)から米長邦雄永世棋聖のファンでした。名人戦で何度も中原名人の厚い壁に阻まれるのを歯がゆく見ていた。四冠王の頃、先崎九段が述べるところの「終盤で一手ずつではなく、自らだけ一・五手指すような感じ」(『米長邦雄の本』)も覚えています。

『運を育てる』など、著書も多く読み、影響も受けました。『六十歳以後』には、「七十歳の恋、すなわち妻からの自立を目指して、私はこれから十年間がんばる」とあります。

連盟の会長職に就いた晩節は、子供への普及やAIとの共存など、今日のブームにつながる課題に力を尽くされました。第1回電王戦でボンクラーズに対し、2手目△6二玉から築き上げた空中要塞も強く印象に残ります。

同対局の自戦記『われ敗れたり』や、週刊誌の連載をまとめた『将棋の天才たち』の刊行は、晩年をまさに一・五手の速さで駆け抜けたようでもありました。

今月私は齢六十を迎えます。

スナップショット

(図は▲2九飛まで)
2211

【ピリ辛流2手目△7二金メモ(4)】図から(1)△4二角は軽率でしたか。以下▲4五歩△同歩▲6五歩△3三桂▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛△5三角▲6四歩△同銀▲4五桂△同桂▲同銀△4四歩▲5六銀引と進行。感想戦では(2)△8五歩や(3)△4一飛が挙がりました。

(コラム「月刊いいね!」 目次はこちら


(前々回(オズボーンのチェックリスト)はこちら
(前回(ランチェスター戦略)はこちら

将棋の指し手や作戦の工夫に、知られた原理や法則を応用する。今回は「ミスディレクション」。マジックの基本技術を取り上げます。

マジシャンは、観客の注意を間違った方向(マジシャンにとっては都合の良い方向)に誘導します。マジシャンがコインを投げ上げ、その方向を見れば、観客はその視線を追って上の方を見る。観客の注意は動くものに、またはマジシャンの向く方向に集まります。

対局中、相手がどこを見ているかで狙いを予測することがあるでしょう。これを逆手に取るのです。

(1図は△6五歩まで)
ミスディレクション2手

1図の△6五歩には、ある攻め筋が見えますね。敵陣(右上)を見て察知されてはなりません。自陣(左下)も同様。(△8六歩などを考えさせない)。そこで、

(1)盤面の右下を見る
(2)さりげなく4六の歩や2八の飛車にちょんと触る。(▲4五歩(偽の攻め筋①)には△6四角ですか。なるほど)
(3)2九の桂や1九の香に触れるもよし。(次は▲3七桂(偽の攻め筋②)ですよ)

このように相手の注意を誘導します。

かくして、図から▲6五同歩△同桂▲6六銀△6四銀▲3四歩(2図)。以下△同銀も△同金も▲3五歩で先手の駒得。姑息が過ぎますか(笑)。

(2図は▲3四歩まで)
ミスディレクション7手

(コラム「ひよこのきもち」 目次はこちら

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