増田康宏八段はこの春順位戦A級に昇級。26歳・デビューから9年余りの昇進はかなり順調にも思えるが、本人や師匠(森下九段)をはじめとした周囲の期待や推測と比べるといかほどだったのでしょう。
以前、研究用に使う駒がプラスチック製であることが話題になりました。
多くの将棋棋士たちが研究でも「いい駒」にこだわる中で…増田康宏七段が愛用している「まさかの逸品」(大川 慎太郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
これを物事に頓着しない、こだわりが少ないと見るのはいかがか。私などはこれこそが「こだわらないという」こだわりだろうと感心するのです。
増田さんは率直な物言いで知られている。「矢倉は終わった」「詰将棋意味ない」などなど。それらに悪意はなく、要は常識や既成概念にとらわれないピュアな心根によるものでしょう。
「ヒート、体がバッキバキになるらしいですね」棋士・増田康宏26歳がNBAに学ぶ“AIと将棋のマインドセット”「食事や睡眠をイチから…」 - 将棋 - Number Web - ナンバー
NBAなど、趣味のスポーツ観戦から着想を得て、対局に活かそうとする。棋力向上につながる心身の鍛練を志す。佐藤天彦九段がクラシック音楽の鑑賞から、将棋の個性を模索していることととてもよく似ています。増田さんもまた、素敵なこだわりを持った人なのでしょう。

(図は▲6七金引まで)

【ピリ辛流居飛車力戦(12)】形勢はともかく、私好みの展開。図から中川八段を思い浮かべながら△7五歩。以下▲4五桂△7六歩▲5三桂成△同銀▲同歩成△同角▲5四歩△8六角▲同角△7七銀と進みました。
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