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初段ナビゲーターのランダムノート

カテゴリ: コラム「月刊いいね!」


山下数毅三段が竜王戦5組で優勝し、竜王戦ドリームが話題となりました。もとより数学者を父に持つエリートとして注目されていた。名は「数毅」。数に毅(つよ)い。将棋の申し子のようです。ランキング戦は2回戦で難敵・藤本五段(当時)を破って波に乗りましたか。私が注目したのは3回戦・出口六段戦(2025/04/10)でした。

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(1図は△7五歩まで)
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1図から▲6五歩△7六歩▲6四歩!△7七歩成▲6三歩成△同金▲7七桂(2図)の進行には驚きました。これってよほど強い人か、よほど弱い人の将棋かと(失礼)。(私は初めて見ました)

(2図は▲7七桂まで)
20250410山下出口37手

(3図は△6六角まで)
20250410山下出口60手

3図から▲5五銀打!△同金▲6四角△6二飛▲5五角△6七歩▲6三歩△同飛▲6四金△5五角▲6三金も才気あふれる手順です。終盤は後手の猛攻を見切り、快勝しました。

(投了図は▲5八玉まで)
20250410山下出口103手

決勝トーナメントは初戦・谷合四段に惜敗。来期は(おそらく)四段・4組で参戦します。一方、今期の三段リーグは現在4勝4敗。山下さんでさえ苦戦する三段リーグって――。

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杉本和陽六段が棋聖戦五番勝負の挑戦者に名乗りを上げました。4月下旬、棋聖戦の優勝賞金が4000万円に増額され、今期から適用されるとのアナウンスがあった。その三日後に挑戦者決定戦(▲杉本和陽五段(当時)△永瀬九段、2025/04/25)が行われました。

当日はモバイル中継をチラ見。昼休を挟んで長考した杉本さんが、アマチュアがやらかしそうな(失礼)銀損の変化に飛び込んだのには驚きました。

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(1図は△5一歩まで)
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後手はガチガチの穴熊。しかも相手は永瀬さん。さすがに「棋聖戦ドリーム」もこれまでかと観念しました。しばらく後に見たのが2図。

(2図は▲2九香まで)
20250425杉本永瀬97手

あれあれ、先手の穴熊が銀のタイルでリフォームされています。この後も熱戦は続き、最後は見事な寄せで先手が勝利。この将棋が逆転するのか……。

(投了図は▲3三歩成まで)
20250425杉本永瀬165手

杉本さんは「泥沼流」米長永世棋聖の最後の弟子。米長さんたっての希望だったようですが、師匠は弟子のプロ入りを見届けることなく、2012年に永眠されました。聡太さんの壁は厚くても、挑戦者に失うものはない。決定戦のように泥臭く、自分らしく戦ってほしいと思います。

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この春、藤井聡太竜王・名人の詰将棋力が話題になりました。3月30日、詰将棋解答選手権チャンピオン戦に6年ぶりに出場し、圧巻の「解図力」で6回目の優勝。全10問、ただ一人の満点。難問とされる第2ラウンドの5問(制限時間90分)をわずか65分で解答しました。

(参考)
詰将棋解答選手権(第22回・2025年)チャンピオン戦出題作
【全体】総合成績 - 詰将棋解答選手権 速報ブログ

4月9・10日、名人戦七番勝負第1局(対永瀬九段)では、最終盤、相手玉を30手超の即詰に討ち取り、ファンのみならず、関係者たちの度肝を抜きました。

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(途中図は△9七金まで)
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「△9七金(途中図)と打って、読み抜けがなければ詰んでいるんじゃないかと考えていました」「詰み手順そのものは、ものすごく複雑ということではないと思うんですけど」(いずれも本人談)。おそらく図の4手前、37分の考慮で△2四同銀と桂を食いちぎるときに読みをまとめたものと思われます。先の解答選手権に比べれば……ということでしょうか。

(投了図は△5三角まで)
20250409永瀬藤井134手

聡太さんは詰将棋作家としても名高い。詰将棋の創作を「盤上に現れる(他人の気づきにくい)詰みの局面の発見」と換言するなら、そうした「作図力」が、指し将棋にも活かされていることは明らかでしょう。強さの象徴とされる「寄せの射程の長さ」や、終盤の逆転術として、相手に難しい選択を強いる局面を作り出す技術なども、類い稀なる作図力によるものかと。

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中盤に差し掛かった女流順位戦。各クラスとも上位と下位の二層に分かれているでしょうか。いずれも実力伯仲。一局一局の重みは順位戦ならではですね。戦況をおさらいしましょう。

(戦前の予想)
(38)どこよりも早い女流順位戦昇級者予想 A級・B級(2024/10)
(38)どこよりも早い女流順位戦昇級者予想 C級・D級(2024/10)

A級(対戦表はこちら
【5回戦までの成績】
(4-1)01○福間香奈 03…加藤桃子 04…山根ことみ 09…鈴木環那
(3-2)02◎伊藤沙恵 05…上田初美

3-2まで6名が競う混戦。01福間さんは休み明けも絶好調。母は強しですね。

B級(対戦表はこちら
【5回戦までの成績】
(5-0)01○渡部愛
(4-1)05…野原未蘭
(3-2)02△塚田恵梨花 03…伊奈川愛菓 10◎加藤結李愛

昇級2名。5-0の01渡部さんはほぼ決まり。残り1枠は3-2まで、実質4名の争いでしょうか。

C級(対戦表はこちら
【4回戦までの成績】
(4-0)03△中村真梨花
(3-1)01○室田伊緒 04△内山あや 06…清水市代 07…小髙佐季子 10…山口恵梨子 15◎大島綾華 20…久保翔子

昇級3名。4-0の03真梨花さんはほぼ決まり。残り2枠は3-1の7名と、2-2の02北村さんまで、実質8名の争いでしょうか。

D級(対戦表はこちら
【4回戦までの成績】
(4-0)05○今井絢 07△磯谷祐維 08△松下舞琳 14…山口稀良莉
(3-1)01…礒谷真帆 02…藤井奈々 09…川又咲紀 12…木村朱里 13◎梅津美琴 33…相川春香

昇級4名。4-0の順位上位、05今井さん、07磯谷さん、08松下さんの3名はかなり堅そう。残り1枠は3-1の13梅津さんまで、実質6名の争いでしょうか。

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(図は△2三銀まで)
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女流順位戦D級より▲梅津女流1級(当時)脇田女流初段(対局2024/12/11、配信2025/01/05)。以前このコラムでも取り上げたごひいき同士の対戦です。梅津さんは師匠(戸辺七段)譲りの強烈な攻め将棋。図から▲3五歩△3二金▲3八飛△3五歩▲4六金△4五歩▲3五金△3四歩▲4五金△同桂▲同角と開戦しました。

両者力一杯戦った熱局は179手で梅津さんの勝ち。下の画像は棋譜中継の最終局面です。藤井聡太さんの勝局、いわゆる「藤井曲線」に感服する一方、下のような「ジェットコースター」もまた、ファンの心を熱くするものがあります。どうか(せめて順位戦だけでも)中継や後日配信を増やしていただけますよう。

20241211梅津脇田グラフ

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吉池隆真四段は、三段時代の2023年、加古川青流戦で準優勝。振り飛車に対し、右玉を用いて強敵を連破していた。(私は右玉のヘビーユーザーなので)ぜひとも四段に上がってほしいと願っていました。

対振り右玉と言えば、糸谷八段の糸谷流がよく知られています。昨年度のNHK将棋講座でも解説していましたが、自身の対局ではとんと見掛けません。やはりトッププロのシビアな研究勝負には不向きなのでしょうか。

吉池さんのプロデビュー戦は竜王戦6組ランキング戦(2024/12/13)。西山女流三冠に対し、名刺代わりとばかりに対振り右玉を採用して快勝しました。読売新聞の観戦記によれば、奨励会時代の右玉採用率は9割。「試行錯誤を続けているが、まだしばらくはこれで行く」と明言しています。

まだ二十歳の個性あふれる「右玉王子」。盤上盤外でのフレッシュな活躍を期待しましょう。

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(1図は▲6七銀まで)
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上の対西山女流三冠戦。1図まで先手陣の何と美しいことでしょう。以下△8三金▲8九飛△6二金▲6五歩△同歩▲4五歩△7二金▲4六角(2図)と進み、戦いになりました。

(2図は▲4六角まで)
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